MY DORMEUIL-Special Interview-


MY DORMEUIL vol.08

木村 祐一氏

インタビュー



今回のMY DORMEUILは、“キム兄”の愛称で親しまれ芸人としてはもちろん、俳優や映画監督など多方面において独特な世界観で魅了する木村祐一さんが登場。ホテルマン、絵画販売、染め物職人など多岐にわたる豊富な経験をお持ちだからこそ人間力に溢れたスタイルとスーツにまつわるユニークなストーリーを語ってくださいました。



“スーツ”、いわゆるカチッとしたセットアップを初めてお召しになったときの思い出などお聞かせ頂けませんか? 



あれは高校の時、17歳かな、何でというよりは、私服で1着持つ!というのが友達同士で流行って。京都のいちびった感じの友達だったから。ちょうどJUNができて、ヤンキーとサーファーとアイビー が流行っていて、VANかJUNかどっちやねんという頃。僕はダブルが欲しくてですね、ネイビーのスト ライプをつくりました。アルバイトでお金をためてね。ピンホールカラーのシャツでネクタイをしてね。今でもピンホールが好きです。カフスはシングルで。
そんな恰好でね、友達と街にご飯を食べに行くんです。みんなでセットアップを着て、大人に見られたかったんですよね。高校生だけど、子供とばれないように遊ぶのが楽しかった。 
駅まで自転車で行くねんけどね。笑



SUITS FABRIC: AMADEUS365



それはまさに“一張羅”的な?笑



そう、シャツもそれ用に一枚だったし、靴もそれ用の革靴で、コードバンのベルトをして!ネクタイは赤のサテンだったかな。そういう、アイテムの一つ一つが流行っていましたね、当時は。 


そういったスタイルに対するこだわりについて、イメージやインスピレーションなどはあったのでしょうか? 



それは映画ですね。あまりスーツは出てきませんが「グリース」とかもそうだし、スーツだと、「ゴッドファーザー」ですね。ネクタイのほそ~い感じ。細かいんですよ、僕割と。シャツの襟は広 がっているのは嫌で、縦に長いのが好き。シャツの袖も太いのがいいし、綿でシワシワのが良いしね。 
その頃はバンドも組んでいたから、バンドの衣装は「グリース」に出てくる本物のロカビリーバンドの、赤のジャケットを着て白のパンツというのを真似て。バギートップという、当時の歌の歌詞にも ありましたけど、パンツを誂えに行くんですよ。高一くらいから誂えていたんですけど、流行りも あったし、どんだけパンツ太くできるかみたいな。 
僕はそんなにむっちゃ悪ではなかったですけど、京都駅の裏に、悪ばっかりがみんな集まる、おっちゃん一人でやってるような店があったんですよね。好きなようにカスタムして、腿巾45cm、裾巾 20cm、スリータック入れて、ハイウエストで作っていました。 
修学旅行はボンタン禁止と書いてあったので、ストレートのを履いていって、新幹線のトイレで着替えたり、まだ当時の写真がありますよ。さすがに履き倒したから今は現物はないですけど、僕のパンツが高校で一番太かったですね!笑 


今でも洋服を選ぶ際にはご自身なりのこだわりがヒントに?



そうですね、今でも欲しいのがないなぁと思うと、ほな作らなしゃあないなあと。まずこんなのが欲しいなと思いながら、買い物に行くから中々無いんですよね、その時は。そうすると、次の年にあるんですよ。 
ファッションも輪廻でしょ。だから無いもの探してしまうんです。無いから欲しくなるんでしょうね。



お召し頂いている紺のブレザーにはどういう思いがありますか?



紺というと、ダークカラーの代表で一緒くたに黒か紺かみたいな人もいはるけど、僕ははっきりしたくて、紺は明るい方が好きで。
20歳前後の頃に着物の染め職人をやっていて、毎日親方の指示で赤、ピンク、紫、黒とかデザインにそっていろんな色を染めるのですけど、その頃に染めていて楽しかったのが、当時は“花紺”と呼んでいた明るい紺とか紫が一番好きだったんですね。人によっては染めやすい色が好きやったり、かと思えば、普通のおっさんがですよ、歯のぬけたようなおっさんが、俺はエメラルドグリーンが好きや~といっていたり、おもしろかったですね。
僕はいまだにその紫とか、花紺が好きなので、生地を決めるのは早かったですね。ボタンもイメージがあったからすぐ決まりました。ブレザーは、上だけでも両方着られるなというイメージですね。あと、もともとノッチドラぺルがそんなに好みでなくて、ピークドラペルでダブルとかが好きなんです。ノッチドなら、三つボタンにしたいとか、色々あって。シングルのスーツはステッチラインがいらないとか、シャツはコバステッチにしてくれとか、細かいことを注文していますね。





やはりスーツをオーダーする時はお仕事用が多いのでしょうか?プライベート含めてでしょうか?



公私共にですね。テレビではそう何回も着るものでもないですが、舞台はやっぱり上着を着て出る場所なので、正装っぽくしたいイメージで、通勤の時からスーツを着ていきます。ドラマなんかは着替えるので、着替えやすさを考えた服を着ていきます。時代劇は前開きでないといけないですし。
以前にも、役柄のイメージにあった襟の広い昔のタイプのスーツが欲しくて、ドーメルのブラウンの生地でオーダーしましたが、それで宣材写真も撮りましたね。ギリギリまで襟を広くして、昔気質なデザインです。

ドーメルのバックグラウンドを知っているというのもありますけど、生地の感じが、しっかりしていますよね。なんて言えばいいのかな、こう、分厚くないのに、しっかりしていて。

“良い衣”を纏っているなという感じですね。


ドーメルのスーツは、007やキングスマンにも出てくるように、キメ服、勝負服とも言われているのですが、木村さんにとってスーツとはどんな存在でしょうか?



ぼくの場合は、いわゆる会社勤めのビジネスマンじゃないので、勝負服というよりはおしゃれ着ですね。スーツを着て仕事はしますけど、TVや舞台のお客さんは細かいディテールまでは見せ られませんから、自分の中で細かい柄とか、うっすら地模様とか、見えへんころを楽しんでます。 実は裏生地はこうなんやぞ、とかいう喜びを感じながらやっています。笑。
人のファッションを見てもディテールが気になるし、気が付いたら伝えたくなるんですよ。気付いてもらったら嬉しいでしょ。笑



木村 祐一
芸人

1963年、京都府生まれ。ホテルマン、職人などを経て23歳でデビュー。
お笑い芸人としてTVや劇場で活躍し、俳優としてはドラマ・映画と多方面で活躍中。 
人とは異なる視点で様々な事象を読み解く吉本唯一の随想家と呼ばれ、ライフワークと 
している「写術」はその独特の世界観に引き込まれる人多数。ホテルマン時代から磨き続けた料理の腕前は芸能界イチとの呼び声も高く、「キム兄& クックパッド つまみ越え」(主婦と生活社)ほか料理に関する著書も多数。

 

DORMEUIL AOYAMA

1842年パリ創業のラグジュアリーファブリックブランド、ドーメルのテーラー。メンズ、レディース。

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